スーパーの店員が勝負を仕掛けてきた!
近所のスーパーに声優みたいな声の店員さんがいる。いつもとても丁寧な接客で、はっきりとした発声とアニメのキャラクターのような声色が印象的だ。
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「またお越し下さいませ」
彼の挨拶はまるで判で押したようにいつ聞いても同じ調子を保っている。その時の気分や疲れが声に表れることなく、常に穏やかで聞き取りやすい発声を意識しているようだ。
決して悪い印象はないのに、彼のレジに並ぶ度になぜか少しそわそわしてしまう。スーパーでは経験したことのない、緊張に似た気持ちが胸の中を通り過ぎて行く。しばらくの間理由は分からなかった。
しかし、ある時突然ひらめいた。この感じ、中学時代の部活の大会で漂っていたピリピリした空気に似ているな。
あ!私は挑まれているんだ。
おそらく、彼の中には空手の型みたいに挨拶の理想形があり、そこを目指して毎回ベストを尽くしてきてるんだ。いや、自己ベスト更新を狙ってきているんだわ。接客の度に挨拶選手権が開催されて、私たち客は彼に挑まれているんだ…。だからこんな固唾を呑むような妙な緊張感が生まれるんだろう。
このことに気づいてから、私はスーパーのレジでもう迷うことなく彼の列に並ぶようになった。そちらが挑んで来るのなら、こちらだってどっしり構えて受け止めようではないか。そんな心持ちで対峙している。

(み)
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